2023/令和5年
927日 (

インタビュー 【トップインタビュー】DXで市民サービス向上=大塚進弘・福岡県直方市長 2023/08/22 08:30

大塚進弘・福岡県直方市長

 デジタルトランスフォーメーション(DX)推進本部を設置し、市民サービスの向上や業務効率化に取り組む福岡県直方市。大塚進弘市長(おおつか・のぶひろ=71)は、「市民が市役所まで時間をつくって来なくていいよう、しっかり進めないといけない」と意気込む。

 2019年の初当選時、市は「周辺自治体に比べ、デジタル化が周回遅れになっていた」。遅れを取り戻すべく、21年2月にDX推進本部を設置。会計システムの見直しなどにより、役所業務のペーパーレス化を進めた。

 新型コロナウイルス禍では、デジタルデバイド(格差)の問題を痛感した。高齢者のワクチン接種を巡り、市民から電話予約が殺到。インターネット予約を追加したが、利用が難しい市民もいた。「『ネットだと便利ですよ』と書いても、そう簡単にはいかないなと思った」と、当時の状況を振り返る。

 デジタル化を進めるに当たって、心掛けているのは「市民が利便性を実感できるもの」に持っていくことだ。現在は、無線技術を活用して河川の水位を監視し、避難指示などに生かすシステムの構築を進めている。「(デジタル化は)行政の独り相撲ではいけない」と強調する。

 市の財政状況も課題に挙げる。「打ち出の小づちがない中、(デジタル化などの)課題にどう応えていくかとなると、他の自治体以上に厳しい」との認識を示す。かつて誘致した企業が地域に定着し、固定資産税などの税収を支えているのが市の現状だ。「先人のおかげで今日まで来ているが、その後ほとんど手を打てていない」と、険しい表情を見せる。

 そうした中、市は隣接する鞍手町と共に、県に新産業団地の造成を申し入れ、了解を得た。団地近くにデータセンターを誘致することも視野に入れている。「県の力も借りながら、何らかの形で将来の発展につながることをやっておかないといけない」と気を引き締めている。

 〔市の自慢〕市民が使えるように公園などを整備している遠賀川の河川敷。「他の都市にはない良い財産だ」と話す。

 〔横顔〕休日は福智山に登ったり、庭で育てたブルーベリーでジャムを作ったりして過ごす。好きな言葉は、ノーベル賞を受賞した湯川秀樹氏の「一日生きることは、一歩進むことでありたい」

(了)

(2023年8月22日iJAMP配信)

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