インタビュー 【トップインタビュー】市の象徴ニシキゴイと世界へ=宮崎悦男・新潟県小千谷市長 2023/08/28 08:30

海外にも多数の愛好家がいる高級観賞魚「ニシキゴイ」の発祥の地であり、越後三大花火大会の一つである「片貝まつり」を開催する新潟県小千谷市。昨年11月に就任した宮崎悦男市長(みやざき・えつお=56)は、「ニシキゴイを切り口にして、小千谷の酒やコメ、さまざまな品に付加価値をつけて、全国、世界に販路を広げたい」と意気込む。
市は「錦鯉(にしきごい)の里」としてPRをしてきた。ブランド化の確立に向けて、市議、県議時代を通じて自らけん引役となり、昨年11月に新潟市で21カ国の駐日大使らを招いた「サミット」を開催。日本観賞魚振興事業協同組合から「国魚」の認定も受けた。「海外での養殖も増えているが、小千谷産は品質が高く、品種も多い」と自信を見せる。国内の出荷量のうち、新潟県は約50%を占め、海外からも買い付け客が来る。
そんなニシキゴイは「小千谷の文化の象徴の一つ」という。美しい模様や色合いを生み出し、それを楽しむ土壌は「小千谷縮(おぢやちぢみ)を通して江戸や京の文化が入ってきて、錦絵などの日本伝統が日常にあったからではないか。そうした地域文化が織りなしてきた産業がニシキゴイ養殖だと思う」と話した。
これ以外にも、地域の活力維持に向けた取り組みに力を入れる。今年度予算で、妊産婦の医療費助成の所得制限廃止や幼児病後児保育の利用料を1日500円にするといった子育て施策を計上した。中でも、市外の専門学校、大学に通う若者に市の特産品を年に2回贈る「おぢやつつみ WITH WISH.」は目玉施策。「市出身の若者の生活支援や郷土愛につなげたい」と語る。
贈る特産品には市の就労情報や生産者の顔が見えるようなメッセージも入れ、若者のUターンを期待。帰ってこない若者とのつながりを深める狙いもある。「若者の夢を全力で応援して、どんどん世界で活躍してもらいたい。そして、いつでもふるさとに帰っておいでという思いを込めた」と話した。
自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)や、「チャットGPT」をはじめとした生成AI(人工知能)などの最新デジタル技術については、人口減少社会を見据えて市政運営に不可欠だと考える。しかし、「未来へのビジョンには志や魂が必要」と述べた上で、「市民総参加のまちづくりを進めたい。市民にメッセージを発信してまちづくりをやっていく上では、やはり生身の人間だからこそ伝えられるものがあるし、そうでなければならないと思う」と語った。
〔横顔〕学生時代に日本一周を共にした大型オートバイ「ホンダCB750」に19歳から乗り続ける。「自分が自然体でいられるスニーカーのような相棒。乗ると原点に戻れる」という大切な存在。
〔市の自慢〕雪の深さは情の深さ。心根のやさしい市民性。
(了)
(2023年8月28日iJAMP配信)