2023/令和5年
104日 (

インタビュー 【トップインタビュー】若者が帰りたくなる町に=川地憲元・岐阜県養老町長 2023/09/04 09:00

川地憲元・岐阜県養老町長

 岐阜県養老町は県西南部に位置し、養老山地や水田地帯などの自然に恵まれている。町名は717年に採用された元号に由来し、古墳などの歴史遺産も多い。近年は少子化や人口減少といった課題に直面しているが、昨年12月に就任した川地憲元町長(かわち・のりもと=54)は、「町外に出た若い人たちが帰りたくなる町にしたい」と意気込んでいる。

 町の人口は1995年に約3万4000人だったが、現在は2万6000人余り。「交流人口をいかにして取り込むかが重要になる。町外の大学に進学、就職した人たちも、ふるさとへの思いは変わらないと思う」と考えている。

 人口減少対策として、3世代同居の世帯が多いという特徴を捉えた補助制度を整備。「結婚などを機に町に帰る場合、土地を買うお金がもったいないから両親が住む母屋の敷地内に別棟を建てる。そこに補助金を出す」と説明する。

 ほかにも、子育て世帯の負担を軽減するため、同居したり近所に住んだりして孫の面倒を見る祖父、祖母に月額5000円を支給。給食費については将来的な無償化を見据え、2割補助を始めた。「子育て世代が戻ってこられるような制度を少しずつやっていく」と語る。

 町を応援してくれる人に情報を発信してもらおうと、今年1月にファンクラブ「YORO SUPPORTER WORLD」を開設した。入会者が協力店に会員証を見せて食事、買い物をすると割引きなどが受けられる。「すでに1500人が登録した」と滑り出しは上々だ。

 企業誘致にも力を入れる。町内で建設が進む東海環状自動車道が2026年に全線開通することが追い風になっており、「中津川市に本社があるサラダコスモの野菜生産工場がもうできたし、他の企業からの問い合わせも多い。場合によってはトップセールスをして企業を呼び込みたい」と熱が入る。

 町内には県営養老公園や「焼肉街道」などの観光資源もある。「食肉は基幹産業に位置付けている。お盆前、ある販売店に並んでいた人に聞いたら静岡から来ていて、安いし物が良いと言って大量に買っていた」。

 17年に開催された「養老改元1300年祭」では町の責任者として成功に導く一方、担当として関わった99年の大規模な土地改良事業が失敗に終わった苦い思い出もある。「人と人との関係が大事だということを学んだ」と今後の町政に生かすつもりだ。

 〔横顔〕91年に町に入り、企画政策課長や副町長などを歴任。22年の町長選で初当選した。趣味は城巡りとウオーキング。

 〔町の自慢〕地元産の肉は「安くておいしい」と評判で、町内には精肉店が多い。養老山地からの伏流水はきれいでおいしく、「あちこちに井戸が掘ってあるのでどこでも飲める」。

(了)

(2023年9月4日iJAMP配信)

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