インタビュー 【トップインタビュー】若者巻き込むチャンス=大泉潤・北海道函館市長 2023/09/08 08:30

「若者と一緒に行政を進めたい」と語るのは北海道函館市の大泉潤市長(おおいずみ・じゅん=57)。かつての上司で当時の現職との一騎打ちになった4月の市長選は注目を集め、投票率は4年前から約9ポイントアップ。投票者は約2万人増えた。「増えたのは20~30代の若い層だと思う。行政に興味を持ってくれる若い人を巻き込むチャンスだ」と意気込む。
江別市出身で、函館市を訪れるようになったのは中学時代。近隣の七飯町に単身赴任した父親に会い行く際にしばしば立ち寄った。海や温泉があり食べ物がおいしく、五稜郭や函館山などの観光名所にもあこがれを抱いた。「だからといってここに住んで働くとは思っていなかった」が、大学時代に「直接住民と関わりたい」と基礎自治体の職員を志望。函館市を選び入庁した。
「若い人に選ばれないまちになっている。意気消沈している」。市長選時から急激な人口減少に危機感を示した。市の日本人人口は24万3080人(1月1日時点)。前年からの減少数4022人は中核市の中でも最悪という。「市は10年ほど、交流人口の拡大に傾斜しすぎた」と指摘。「市民の幸福度を高めることが大事。誇りを取り戻したい」と語る。
起爆剤と考えるのが北海道新幹線の函館駅乗り入れだ。北海道新幹線は現在、市から在来線で20分程度の新函館北斗駅(北斗市)まで開通。JR北海道が目指す札幌延伸が実現すれば、函館―新函館北斗間は同社の経営から切り離され、第三セクターでの運行となる見通しだ。「新幹線が来るまちと、乗り入れられず衰えていくまちでは期待度が違う」。まずは乗り入れにかかる費用や課題などを調査し、今年度中に結果を公表予定。「乗り入れで三セクの収支がよくなるという結果が出たらいい。苦しくなるなら乗り入れは無理だ」と今後の方向性を明かす。
ふるさと納税の寄付額拡大にも注力。公約では4年後に100億円にすると掲げた。22年度は約12億円だったが、今年度の目標額は20億円に設定。7月にはホタテの貝柱やイカの塩辛など64品の返礼品を追加した。「インパクトのある目標を掲げることで事業者のやる気を喚起できている」と手応え。現在、市職員と物産協会で行っている運営を民間へ包括委託することも検討中だ。「地元事業者と連携し、商品開発のノウハウを底上げしてくれるようなところと組めれば」。市の底力を信じている。
〔横顔〕1995年市に入り、保健福祉部長などを歴任。中学時代、家族と散歩する中で聞いた市内の教会群からの鐘の音が「忘れられない」。俳優の大泉洋さんの実兄。
〔市の自慢〕景観のよさや料理のおいしさなどは「函館の持つ美しさだと思う」。
(了)
(2023年9月8日iJAMP配信)