2023/令和5年
925日 (

インタビュー 【トップインタビュー】人口の社会増へ歩み止めず=上崎勝規・兵庫県洲本市長 2023/09/13 08:30

上崎勝規・兵庫県洲本市長

 「社会減がほとんど止まりつつある」―。1979年、兵庫県洲本市に入庁して以来、同市一筋で行政に携わってきた上崎勝規市長(うえさき・かつのり=68)は、市の人口動向についてこう説明する。人口の自然減少にはあらがえないが、大学との連携促進やコワーキングスペースの整備などによって関係人口や交流人口を増やす取り組みを進め、「社会増」の継続を目指す。

 市として10年前から力を入れてきたのが、全国各地の大学から学生を受け入れ、地域活性化のためのアイデアを共に考える「洲本市域学連携事業」。淡路島に位置する同市内には大学がなく、高校を卒業した若者が進学や就職で島外に出てしまう上、一度離れると島に帰ってこないという課題を抱えていた。

 さらに、働く世代が市に足を運びたくなるような環境整備も進め、2022年度までに市としてコワーキングスペースを2カ所新設。こうしたことから22年度には、市内への転入者数が市外への転出者数を上回る社会増に転じた。「関係人口を増やしていこうと一生懸命やってきたおかげで社会減が止まった。積み重ねてきた成果なのかな」と頬がゆるむ。

 人口の社会増に注力する傍ら、「安心して定住できるように考えていかないとまちの活力はなくなってしまう」と、なお危機感を募らせる。「地域で暮らす人が豊かになることが原点」と話し、市役所職員時代から「市民ファースト」を信条としてきた。

 今後は、市役所の手続きの簡素化を図る。今年度に国から支給されたデジタル実装の補助金約2億4000万円を活用する予定だ。目指すは「書かない窓口、行かない窓口」。ただ、市内の65歳以上の人口が36%を占める中、デジタル化にうまく適応できない市民もいることを考慮し、市民に寄り添ったデジタルトランスフォーメーション(DX)を模索していく。

 22年度は、市長選の選挙時に公約として掲げた中学生以下に年10万円を支給する独自施策を実行した。しかし、ふるさと納税の返礼品調達費をめぐる基準違反によって22年5月、制度の対象から除外され、財源の確保が難航。今年度は中学生以下への支給を見送った。「国の子育て施策の支援の仕方が変わってきている」として、今後は国の動向を注視しながら適切な施策を検討する。

 〔横顔〕ストレス解消法は音楽鑑賞。楽団に所属してコントラバスの演奏にも精を出す。

 〔市の自慢〕季節ごとに市内で収穫できるビワ、イチジク、ブドウなどの豊富な果物。いち押しは「なるとオレンジ」。独特の苦さがあるのが特徴で、「悩ましい味」とアピールする。

(了)

(2023年9月13日iJAMP配信)

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