2023/令和5年
104日 (

インタビュー 【トップインタビュー】念願の高速大容量回線が開通=宮城光正・沖縄県北大東村長 2023/09/14 08:30

宮城光正・沖縄県北大東村長

 沖縄県最東端の太平洋上に浮かぶ北大東村で2022年11月、沖縄本島との間が全長410キロに及ぶ海底光ケーブルで結ばれた。念願だった高速大容量の回線が開通し、宮城光正村長(みやぎ・みつまさ=68)は、「オンライン教育、診療に道が開けた」と喜ぶ。

 県内で唯一、未開通の自治体だった。11年、テレビ放送の地デジ化に合わせ、南大東島に開通するまで、両島の村民は、東京都が小笠原諸島のために整備した通信衛星を利用し、東京の番組を視聴していた。沖縄の放送は見られなかった。

 北大東は同年以降、南大東の基地局からの無線中継に頼ったが、不安定さに悩んだ。教育委員会が08年、現役東大生講師による遠隔課外授業を始めたが、画像は乱れ、音声も途切れた。「ケーブル開通で改善されるだろう」と歓迎する。

 県は今年8月、さらに南北間のケーブル敷設に着工。沖縄本島と南北間が双方向につながる「ループ化」すれば、時折発生する断線時でも通信途絶の恐れは低減する。「小規模自治体で運営は非常に厳しく、1人の職員が広く薄く業務を兼ねて抱える」状況だが、国の推進するデジタル化にも「見通しが立った」と胸をなで下ろす。

 基幹産業はサトウキビ生産。気象条件などから代替が利かない上に「国土を守る」側面もあり、1トン当たり約1万7000円の補助金が支給される。村民1人当たりの所得は426万円(21年度)と県平均の倍近いが、「暮らしは決して豊かではない。いっぱいいっぱいの生活だ」。輸送費の上乗せなどで高騰する生活コストに加え、島には高校がなく、子どもは県内外へと進学し、家計が二重、三重に膨らむためだ。役場にも兼業者が少なくないという。

 このため人口維持が課題だ。「離れた子たちに戻ってもらうには、働ける場所をそろえないといけない」と、農水産業の振興に力を入れる。中でも成長著しいのが漁業だ。村の融資で漁船を大型化し、マグロなどの水揚げ量が4年で4倍近くに。「専業が増え、小規模でも生計を立てられている」と満足げだ。

 19年開港した大型の県営漁港がその後押しとなった。総工費122億円を掛け、東京ドーム0.8杯分の岩盤を掘り込んだ。「これなくして島の将来は想像できなかった。完成は革命だ」。外洋の荒波に削られる海岸には船が接岸できず、漁船はクレーンでつり上げての陸揚げを強いられていたが、操業環境が安定した。

 役場では近年地元出身者からの応募がない。「先人が努力で開拓した島を、さらに豊かにして後世につなぎたい」。足元では離島自治体間での共同採用試験の実施に取り組みつつ、ケーブル開通でデジタル化へも第一歩を踏み出した。

 〔横顔〕県立高で食品加工を学び、菓子職人を目指し上京した過去も。75年役場に入った。

 〔村の自慢〕太平洋上に浮かぶ孤島のため、岸壁からマグロが釣れる。文字通り「満天」の星空も有名。

(了)

(2023年9月14日iJAMP配信)

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