2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】町政運営の持続可能性高める=田渕川寿広・鹿児島県中種子町長 2023/09/21 08:30

田渕川寿広・鹿児島県中種子町長

 島しょ防衛の要の一つとして、またサーファーのメッカとしても知られる鹿児島県種子島の「へそ」に位置する中種子町。4月に無投票で3選を果たした田渕川寿広町長(たぶちがわ・としひろ=61)は「農畜産業の資材・飼料高騰に生産性向上、産み育てやすい環境づくり、デジタル人材の育成など課題は山積しており、全方位に目配りしながら町政運営の持続可能性を高めたい」と表情を引き締める。

 自身が「若年層の安定雇用にとどまらず、将来の税収にも効いてくる」と期待を寄せるのは、2024年度に開設する県立種子島中央高校のデータサイエンス系学科。文部科学省の普通科改革支援事業の対象として、県教育委員会が県立校で初の改編を決めた。

 「高校生が起業して社長になる時代。種子島でリモートで働き、都市圏の就業先から収入を得たっていい」。観光名所が点在する好立地の民間ワーケーション施設では、町出身者が起業した東京のデータ解析ベンチャー社員を講師に招き、種子島中央高の教職員らが人工知能(AI)の学校現場での活用など模索を始めた。「島の定住人口増加へ3次産業の裾野を広げたい」

 一方、大きく育てる必要がある子牛の生産農家は配合飼料高騰の影響を受けており、子牛を引き取る肥育農家の競り価格は平均50万円台に低迷。飼料価格はこの2年で2.5倍程度、1トン当たり8万円前後に急騰しており経営への負荷は大きい。「国が進める『食の安全保障』には離島農業の活性化が欠かせない。高齢化に加え、苦しい経営が続くと後継者不足に拍車がかかる」と憂慮。前年度必要経費の最大5%を追加支援する考えで、昨年と異なり200万円の上限は撤廃した。

 また、妊産婦の心のケアや0歳児からの保育無償化などに取り組む必要性について「非課税世帯にとどまらず、すべての子育て世代が安心して産み育てられる環境を抜きに、各産業の担い手は定着しない」と訴えた。西之表市馬毛島の自衛隊基地整備に伴い、町内に約100世帯の隊舎が新設されることも理由に挙げた。

 早くから自衛隊施設の誘致に官民一体で取り組んできたことについては「馬毛島の基地自体と切り離して考えてきた。自衛隊施設は経済効果や雇用拡大、防災機能強化の点で大きなメリットが見込める」と指摘。「(交付金期待ではなく)あくまで地域活性化が目的だ」と強調した。

 〔横顔〕鹿児島市内の高校卒業後、日本電信電話公社(現NTT)に入社。86年から町の建設会社を経営し、15年に出馬し初当選。2男1女は独立し、孫3人と遊ぶのが楽しみ。趣味はサーフィンとゴルフ。

 〔町の自慢〕町運営の「よいらーいき(皆一緒に)スポーツクラブ」がコミュニティーの中核。陸上競技場やテニスコート、野球場や体育館、武道館を備えた中種子中央運動公園(太陽の里)を舞台に、幼児からシニアまで多種多彩な教室・サークルが開催されるほか、県外から学生・社会人チームが合宿に訪れる。

(了)

(2023年9月21日iJAMP配信)

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