インタビュー 【トップインタビュー】子育て支援からUターンまできめ細かく=藤崎猪一郎・宮崎県諸塚村長 2023/10/02 08:30

「切れ目のない子育て支援から、移住定住やUターン促進などにつなげていく息の長い取り組みが重要だ」と話すのは宮崎県諸塚村の藤崎猪一郎村長(ふじさき・いいちろう=63)。昨年の台風被害からの復旧を最優先としながらも、「小さな自治体であることを逆手に取ってきめ細かい施策展開をしたい」と意気込む。
子育て支援策については「これまでに充実させてきたが、最近でも医療費無料化の拡大や、村外の寮などに住むことになる高校生への就学支援など、支援策を強化し続けている」と強調。一方で、帰省する大学生、高校生による中学生対象の講座も企画。「若者の地元愛を育て、自己実現のきっかけづくりにしたい」という。
移住定住促進ではUターンへの期待が特に強い。「諸塚に関心のある人はどこからでも大歓迎だが、郷土愛を持った諸塚村出身者が戻り活躍してほしい」と率直に語る。今春には、首都圏、大都市圏などからの移住に限られる国や県の移住支援金の基準を超え、全国各地を対象にし、さらに「Uターン加算」も設けた。
来年度には、地域おこし協力隊に「Uターン枠」を設ける方針。国の基準外の地域からでもUターンの場合は村単独の予算で受け入れたり、特典を設けたりといった取り組みを検討中だ。藤崎氏は「村内に仕事はあるが、すぐに決められない人もいる。協力隊として仕事をしてもらいながら2~3年かけてやりたいことを見定めてもらう」と狙いを語る。また、県内で先陣を切って特定地域づくり事業協同組合が発足。移住の受け皿としての役割も期待している。
諸塚村ならではの特徴も生かす構え。1907年に村是「林業立村」を宣言。2004年には適切な森林管理が世界的に認められ「FSC認証」を自治体全体として日本で初めて取得した。藤崎氏は「森林は村の最大の資源。村外客に愛される森林空間づくり、Jクレジットの活用などさまざまな可能性を考えたい」と話す。また、九州中央道、それにつながるバイパス道などの計画が進みつつあり、10年後には福岡、熊本などがより身近になるほか、貿易港でもある細島港(宮崎県日向市)との最短ルート上に位置付けられる。藤崎氏は「関係人口増、地場商業振興など、通過だけではなく、諸塚の発展につなげる」と知恵を絞る。
〔横顔〕地元農林業の家に育つ。村役場入り後15年間は林業の現場を担当。その後、病院、企画、産業などの各分野、総務課長、副村長など中枢を経験し、今年5月から村長。「現場主義」と「総合的知見」で村政運営に当たる。
〔村の自慢〕合併を拒んだ自主独立精神など特色のある村として生きてきた先人の賢明な判断を誇る。48年には村独自の自治公民館制度を開始し、地域振興を担う相互扶助の精神を育んだ。昨今の台風災害の復旧にも生かされている。
(了)
(2023年10月2日iJAMP配信)