インタビュー 【トップインタビュー】子育て環境充実へ、市町と取り組む=一見勝之・三重県知事 2023/10/03 08:30

9月に就任3年目に入った三重県の一見勝之知事(いちみ・かつゆき=60)。山積する課題の中で、特に注力してきたのが子ども・子育て関連の施策だ。「人口減少対策のためにも、子育て環境の整備を加速する必要がある」と考え、支援を網羅的に展開。市町への支援策も拡充を進めており、「市町と一緒になって子育てしやすい県を目指す」と力を込める。
今年度の予算で「一番大事なものとして取り上げた」と強調するのが、子ども・子育て関連施策だ。結婚につながる出会い支援から妊娠、出産、子育て、ヤングケアラーや児童虐待対応など幅広く盛り込み、当初予算額は前年度比で約16%増やした。就任以降、「児童福祉施設への視察で得た気付きや、庁内議論で社会減対策としても子育て環境を整える必要があると実感した」ことがその理由だ。
市町への支援も強化している。未就学児の医療費を無償化している市町への補助拡大はその一例だ。「子どもが豊かに育つ県になるよう、一生懸命やっている市町に寄り添い、共に考えていく」と強調する。
「県の持つ広域性を生かして、良い事例を横展開する」ことも役割と考え、市町が発案した独自の子育て支援策を資金面で補助する制度も創設した。好事例を生み出すことを後押しし、他の市町への波及効果を狙う。
一方、今年5月には津市で、児童相談所が対応していた女児が母親の暴行で死亡したとされる事件が発生しており、「現場のニーズに合った子ども施策を充実化したい」と話す。
就任後の2年間は「今後5年や10年の間に何をすべきかという方針を議論し、決めることができた」。このうち、今年策定した人口減少対策方針では、柱の一つにジェンダーギャップの解消を掲げた。
民間の研究団体の発表によると、県は男女間の賃金格差など経済分野でのジェンダーギャップ指数が全国46位。「女性の就職先が多くなく、給与も安いとなると、県外に出て行ってしまう」と危機感を募らせる。状況を変えるには「企業との連携がとても重要になる」と考える。
加えて、若者の県外流出の抑制ではなく、転出した人に戻ってきてもらう人口環流の促進も強化する。大学卒業後のUターン就職だけではなく、「30~40代などターゲットを多様化する。従来とはやり方を変えなければならない」。来年度の予算には、こうした人口減少対策方針に基づいた具体的な施策も盛り込む考えだ。
〔横顔〕趣味は山歩き。「知事になってから全然行けなかったが、(再開に向けて)山の道具を点検したい」。
〔県の自慢〕「他の知事から観光地が豊富とうらやましがられるが、一番の観光資源は人の優しさだ」。
(了)
(2023年10月3日iJAMP配信)