インタビュー 【トップインタビュー】まちづくりに心の豊かさを=三宮幸雄・埼玉県北本市長 2023/10/04 08:30

JR東京駅まで高崎線で50分ほどの位置にありながら、全国でも有数のホタルの名所として知られ、緑が豊かで都会と田舎の両方の魅力を持つ埼玉県北本市。4月の市長選で再選を果たした三宮幸雄市長(さんぐう・ゆきお=72)は、「物の豊かさではない心の豊かさ。文化的なものをまちに根付かせることが2期目の仕事だ」と抱負を語る。
そこで取り組むのが、市に所在する縄文時代中期の低地遺跡「デーノタメ遺跡」の国指定史跡化だ。三宮氏は、2024年の秋口には国の史跡になるとの見通しを持っている。遺跡を重要視する理由については、「縄文時代の循環、共生などの文化が、今の持続可能な開発目標(SDGs)につながる。まちづくりのヒントがある」と説明。指定を受けた後の活用策として、「縄文時代のような本当の森づくりを目指したい」と語る。
市民からも国指定化に前向きな声が聞かれ、遺跡の地権者の9割程度から同意を得た。さらに「住みやすくて、大きな遺跡の中に囲まれた住宅地になれば、相乗効果でこのまちに住みたいなという人が出てくるんだろう」と期待する。
市は、ふるさと納税にも力を入れており、3年連続で寄付額が県内1位となった。市長就任前の18年度は1億6000万円程度だったが、三宮氏は「いろいろな意見があるが、収入という意味で着目していいのでは」と判断。ふるさと納税の担当を市長公室に移管し、歳入増に向けて指揮を直接執ることにした。
返礼品拡充策の一つとしては、市内に工場があるオーダースーツメーカーの仕立て補助券で、高額なものを用意。富裕層からの寄付を狙ったものだ。このほかにも新規の返礼品を提供するなど、さまざまな仕掛けを用意。22年度の寄付額は約11億円で、23年度は8月末時点で前年同月比1.2倍となる約2億2000万円に上った。この調子を続けたいという三宮氏。「北本に愛着を持ってもらうため市を巡るツアーも企画し、寄付した人と盛んに交流しながらリピーターになってもらいたい」と笑顔を見せた。
〔横顔〕法政大大学院で政治学を修了し、市議を4期務めた後、19年に市長初当選。妻と2人暮らし。城跡やローカル線を巡るのが趣味。座右の銘は「信なくば立たず」。
〔市の自慢〕緑が豊かで多くのホタルやトンボが見られるところ。大宮台地の高台にあり、近隣自治体には「北本へ逃げろ」という言い伝えがあるほど、災害に強い。
(了)
(2023年10月4日iJAMP配信)