2023/令和5年
126日 (

インタビュー 【トップインタビュー】20年後見据えて人口減対策=村上孝治・愛知県東栄町長 2023/10/06 08:30

村上孝治・愛知県東栄町長

 愛知県北東部の山間部に位置する自然豊かな東栄町は、天然物のアユや化粧品などの原料となる鉱物「セリサイト」が名産だ。長野県や静岡県から車で1時間ほどで県外からの観光客も多い。人口約2800人の小さな町では、人口減少が喫緊の課題となっており、村上孝治町長(むらかみ・たかし=65)は「2040年に人口2100人以上を確保したい」と約20年後を見据えて意気込みを語る。

 「人口確保には若者を中心とした生産年齢人口の流入と定住促進が重要」と、若者の移住定住を後押しする「空き家活用住宅整備事業」を2019年から展開している。町が空き家を改修して移住希望者に貸し出し、家賃を改修費用に充てる。町は実質負担がない上、移住者は町から移住定住へのフォローを受けることができ、相互に利点のある仕組みだ。これまで13世帯52人がこの事業を利用して移住。そのうち中学生以下の移住者が21人と若者の移住を後押しする事業となっている。

 さらに、「移住者が移住者を呼ぶ町」を目指すため「移住ソムリエ」という独自の取り組みも実施。町から認定された移住ソムリエ123人が移住希望者からの相談に対応する取り組みで、町民とのコミュニケーションを通して移住につなげているという。ソムリエの中にはもともと移住者だった人も多く、積極的な情報発信を行っている。「移住定住の促進には小さな事業の積み重ねが重要だ」と力を込める。

 医療体制の整備にも力を入れてきた。1961年に開設された東栄病院が唯一の町立病院だったが、設備の老朽化や医師・看護師の減少などの課題を抱えていた。そこで、村上町長は東栄病院を廃止。22年に「東栄ひだまりプラザ」として保健、医療、福祉、介護部門を集約した医療総合施設を開業した。それぞれの部門が連携することで包括的なケアシステムが構築され、町民の負担が軽減されたという。「人口問題を解決するのに一番重要な要素は、医療や教育など最低限必要なものを充実させることだ」と強調する。

 「今後は教育や情報インフラなどを充実させ、町を出た若者がいずれ戻ってきてくれるような体制を整えることで、人口問題を解決に導きたい」と今後の展望を語った。

 〔横顔〕学生時代からずっと野球をしており、少年野球のコーチ、審判も務める。観戦も好き。

 〔町の自慢〕1976年に重要無形民俗文化財に指定された花祭。

(了)

(2023年10月6日iJAMP配信)

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