インタビュー 【トップインタビュー】「宇宙留学」から移住につなげる=小園裕康・鹿児島県南種子町長 2023/10/06 08:30

鉄砲伝来の地として知られる鹿児島県種子島の最南端に位置する南種子町。4月に再選を果たした小園裕康町長(こぞの・ひろやす=62)は「宇宙留学」と名付けた、町ならではの家族留学制度を生かし移住促進を狙う。「留学が順調に浸透してきて、移住してもらえる体制を少しずつ整えた」と自信を見せた。
町には宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大型ロケット発射場「種子島宇宙センター」があり、打ち上げの際は大勢のロケットファンや関係者が集まる。
町は「宇宙留学」として、1年間の家族留学や里親留学などの事業を1996年から実施。「留学」してきた小中学生は町内の学校で、宇宙に関するJAXAの出前授業を受けられる。今年は41世帯の希望があったのに対し、実際に留学に至ったのは20世帯。「住居がまだ整っていない」のが理由で、受け入れ体制のさらなる拡充を唱える。現在は住居を増やすため、民間事業者による社会資本整備(PFI)で準備を進めている。
留学にとどめず移住・定住の迎え入れにもつなげるため、町独自の空き家改修制度も設けた。「うちの町に来たい、留学をした後もそのまま残りたいと言ってくださる方がかなりいる。住居などの体制をまずは変えたい」と意気込む。
同じ島にあり、1月から着工した西之表市馬毛島での米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)移転計画に伴う自衛隊基地建設に、町は賛意を示してきた。「協力すべきところは協力しながら、住民の不安や問題点があれば(国に)伝えられる環境づくりをしなければならない」として、基地との共存を模索する。
西之表の大規模な基地建設で工事関係者が増え、ロケットファンなど観光客らの宿の確保が難しくなっている。こうした中でホテル需要の高さに手応えを感じており、町ではグランピングリゾートの計画が進んでいる。
一方で後継者不足により廃業する宿も見受けられた。後継者の確保については、「島外から町に来られた方としっかりマッチングできるような方策も考えていきたい」と今後の課題を強調した。
〔横顔〕久留米大商学部卒業後、町役場に入り、総務課長や副町長などを歴任。スポーツが得意。学生時代は剣道やサッカーに汗を流した。
〔町の自慢〕南端に位置する種子島宇宙センターでは、宇宙科学技術館など日本の宇宙開発に関する展示などを見学できる。
(了)
(2023年10月6日iJAMP配信)