インタビュー 【トップインタビュー】新会長「地方目線で国に意見を」=村井嘉浩・宮城県知事(全国知事会長) 2023/10/10 08:30

9月に全国知事会長に就任した村井嘉浩宮城県知事(むらい・よしひろ=63)。就任会見では「結果を残す知事会」を掲げ、2年の任期で取り組む新たな施策を打ち出した。会長の役割について「47人の知事の考え方を一つの方向にまとめ、時には地方の目線から国の事業や手法に意見し、ただしていくことも重要」と話す。
国内では急激に人口が減少する中、自治体が担う事業の負担が相対的に増えていることを問題視する。「例えばスポーツイベントなど、都道府県が国と協力して行う各種事業が、これからの時代に必要なのかどうか是々非々で議論したい」。今秋以降、国民運動本部(本部長・阿部守一長野県知事)を中心に議論を始める見込みだ。
東京一極集中による地方税の偏在を巡っては夏の全国知事会議に引き続き、年末に向けても再び議論となりそうだ。「地方で生まれた子どもが東京に集まるなど、東京都の繁栄は地方が支えている部分もある。都は地方にもある程度目を向けてほしい」と話す。
一方で「都税を奪い取ればいいということでは決してない。東京対地方(の構図)はお互いにとって不幸だ」とも。バランスを取りつつ国への提言に向け意見を集約していく意向を示す。
国外へのアプローチでは、観光誘致や人材獲得を効率的に行うため、国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(JETRO)などと協力し、知事会としてのプロモーション活動を提案。「各県、各地域ごとでPRしても、海外ではなかなか注目されない。県単位では行かないような地域にも出向いてアピールしたい」と意気込む。
県内の施策では、マイナンバーカードの情報をスマートフォンのアプリに登録し、幅広い分野で活用できる「デジタル身分証アプリ」の推進に注力する。出発点は東日本大震災。「当時はどこに誰が避難して何を求めているか分からず、必要ないものが避難所に送られることが続いた」と振り返る。
アプリには住民票と一致した情報が登録。原子力災害時には、避難指示などのプッシュ通知のほか、避難所へのチェックインなどにも利用できる。「確実に本人確認ができ、災害時には高い効果が発揮されるだろう」
大規模な森林開発を伴う再生可能エネルギー事業者に課す新税の検討も進める。東京都豊島区がワンルームマンションを減らすため導入した「狭小住戸集合住宅税」から着想を得た。一定規模以上の森林伐採時には、営業利益の2割相当を課税する仕組みで「事業者には大きな痛手だろうが、税収が目的の新税ではない」と強調。市町村が定め、再エネ施設が非課税となる「促進区域」へ誘導するのが狙いで、来年4月までに実現を目指す。
〔横顔〕三陸沖の水産物のPRに余念がなく「自宅でもよくホタテやワカメを食べる」。
〔県の自慢〕仙台市から東京まで最短1時間半という首都圏への交通の便の良さ。年間通じ暮らしやすい気候も自慢。
(了)
(2023年10月10日iJAMP配信)