2023/令和5年
126日 (

インタビュー 【トップインタビュー】公約は全て復興のこと=佐々木拓・岩手県陸前高田市長 2023/10/11 08:30

佐々木拓・岩手県陸前高田市長

 東日本大震災から12年7カ月。大津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市は、中心市街地の再建が進み、2022年12月にはハード整備も完了した。23年2月の市長選で初当選した佐々木拓市長(ささき・たく=59)は「公約に掲げたことは全て復興のこと」と話し、新たなまちづくりに力を注ぐ。

 公約の一つに基幹産業である「農林水産業の生産額を4年間で倍増」を掲げた。まずは、三陸海岸の可能性を生かした新事業に着手。大手水産・食品会社のニッスイとサーモンの養殖事業を始める。近年サーモンの不漁が続き、水産加工業なども厳しい状況にある。「安定的に原料が供給できる仕事が地元にでき、関連産業も活性化するのではないか」と期待を込める。

 人手不足も農林水産業の課題だ。同市は家族経営の小さな事業者がほとんどで高齢化も進んでいる。一方、作業を省力化する機械を発明したり、水産業で起業したりする若者もいるという。「われわれのそばにいる素晴らしい才能を持つ人や企業を助ける」とし、支援する考えを示した。

 公約には「大学誘致」も盛り込んだ。学生に住んでもらい、市の活性化につなげたい考えだ。都市部の大学の地方展開や、陸前高田市を活用した大学間の合同授業などさまざまな可能性を探っている。

 復興事業で多くの施設が完成したが、維持管理経費が膨らむことに市民の懸念もある中、大学の講義での施設活用も検討しているという。「震災以降、さまざまな大学や国の人たちが陸前高田で防災の研究や交流をしている。復興事業でできたホールや野球場、サッカー場を学生に使ってもらい、施設の有効利用を図りたい」と語る。

 企業誘致についても検討している。同市は夏は比較的涼しく冬は温暖な気候で、きれいな自然もある。こうした点をプラスに捉え、オンラインでできる仕事の誘致も思案中。「環境の良いところに住みながらさまざまな仕事ができる。仕事の仕方が変われば、今まで考えられなかったような企業が地方にも来るのかなと感じている」と話す。

 観光面では、津波伝承館の来館者数が80万人を達成したほか、21年にワタミオーガニックランド、23年9月にはスノーピークが運営するキャンプ場がオープンしており、交流人口の増加を目指す。「復興事業でいろいろなインフラや施設ができた。にぎわいを作るために一つでも多くできることをしたい」と意気込んでいる。

 〔横顔〕東京水産大学(現東京海洋大学)を卒業後、1987年に農林水産省入省。水産庁参事官などを経て23年2月に陸前高田市長に就任。

 〔市の自慢〕市出身の千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希選手。「どんな市民も佐々木選手のことになるとみんな笑顔になる。本当に夢がある」と笑顔を見せた。

(了)

(2023年10月11日iJAMP配信)

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