2023/令和5年
126日 (

インタビュー 【トップインタビュー】「オーガニック」でらしさを展開=渡辺芳邦・千葉県木更津市長 2023/10/12 08:30

渡辺芳邦・千葉県木更津市長

 東京湾唯一の自然干潟を有する千葉県木更津市。豊かな自然と都心に通える利便性を兼ね備え、子育て世代の移住も多い。人口増加や地価上昇で話題になるほか、「オーガニック」に力を入れてまちづくりを進めるなど個性を放つ。渡辺芳邦市長(わたなべ・よしくに=59)は「他とは違う、木更津らしさを展開し、求心力を持てるかが課題。心豊かな生活を提供できるまちにしたい」と話す。

 市が発展したのは、昨年12月に開通25年を迎えた、市と川崎市を結ぶ東京湾アクアラインの存在が大きい。開通当初は高額な通行料金が足かせになったが、2009年に「800円」化が実現し、利用が活発化した。大型商業施設が相次いで立地し、雇用の場も増えた。

 「アクアラインのおかげで、都心に通う、地元で働く、農業を営む、多様な暮らし方が可能になった。市街地や農村部、それぞれの良さをつくっていきたい」

 全国でも珍しい「オーガニックなまちづくり条例」を施行するなど、独自の視点で地方創生に励む。渡辺氏は「オーガニックには循環やつながり、持続可能性という意味が含まれている」と説明。「民間の力、地域の力、みんなでまちづくりをしていこうという考えだ」。

 19年度からは、公立小中学校(全30校)の給食に農薬や化学肥料を一切使わない有機栽培のコメを導入。22年度の米飯給食では50%超が有機栽培のコメで提供された。25年度にも100%を達成できる見通しだという。「環境保全や食育推進、何より農業振興につながる」と手応えを感じている。

 地域経済の活性化では、地元金融機関と連携し、18年10月に導入した電子地域通貨「アクアコイン」が波に乗る。ユーザー数は累計約3万2400人で、決済額は約16億5500万円に及ぶ。物価高騰の支援策にも効果的で、9月には利用金額の20%をポイント還元する事業を実施し、市内での消費喚起を後押しした。市内の経済循環を目指し「もっと多くの市民に還元されるよう、ユーザーを増やしたい。それと、企業間取引(BtoB)を活発にしたい」と意気込む。

 現在、市庁舎の建て替え計画も進む。「将来的には、市役所に来てもらわなくても行政サービスを提供できるようにしていきたい。そのときには、さまざまな手続きをアクアコインでできるようになればいいな」と笑顔で語った。

 〔横顔〕趣味は7年ほど前に始めたトライアスロン。「脚や腕を使う。トライアスロンは生涯スポーツ」。海外都市と交流が多いため、最近は英会話の習得にも励んでいる。千葉県議を経て14年3月に市長に就任。現在3期目。

 〔市の自慢〕干潟。オーガニックブランド。人を受け入れる寛容さを持つ市民の気質。

(了)

(2023年10月12日iJAMP配信)

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