インタビュー 【トップインタビュー】村民764人、「最大多数の最大幸福」を=高橋昌幸・北海道神恵内村長 2023/10/18 08:30

北海道の南西部、積丹半島に位置する神恵内村。2023年9月末現在で村民は764人と、道内で2番目に人口の少ない自治体だ。6期目を務める高橋昌幸村長(たかはし・まさゆき=73)は「最大多数の最大幸福を目指す。ほとんどの人の名前と顔が一致する規模になり、愚直に村民の幸せを実現する」と、村民目線に立った村政を進める決意だ。
村の人口は、1920年の4357人がピークだったが、55年から減少の一途をたどり、700人台にまで落ち込んだ。要因については、村の基幹産業である漁業の衰退を挙げる。近年、海水温上昇などの影響で水揚げ量が減っていることに加え、「漁業が機械化、省力化したことで力を弱めた」と指摘。「人口は一つの力になるから、少なくならないようにやってきたが(減少が)止まらない」と吐露する。
こうした状況を打破しようと、村では養殖業を発展させようという動きがある。2016年からは地元の漁協がウニの海上養殖を始めたほか、19~21年には官民連携で陸上養殖の実証実験を実施。23年度からは、大阪の民間企業と共にウナギの陸上養殖にも乗り出す。雇用の増加も見込めることから「産業の裾野が広がることで、村のイメージが良くなる。何より人が入ってきてくれたらうれしい」と期待を寄せる。
「自分で採ってきたものを自分で値段を付けられる、そういう産業に育たなければ」と、漁業の振興を目指し、漁業者らに提案したのが水産加工を通した村の特産品づくりだ。20年には、地元漁協の女性部がつくる加工品がブランド化され、「ホッケの開き」や「サケフレーク」などの製品が人気を集めている。村のふるさと納税の返礼品としても提供しており、海上養殖が成功した「冬の生うに」とともに寄付額の増加や村のPRにもつながっている。
村では20年、寿都町と共に全国で初めて、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向けた「文献調査」が始まった。調査が依然として2町村以外に拡大していないことについて「日本全体の課題」と指摘し、「全国的な議論に発展して」と訴えた。
調査地には国から多額の交付金が与えられるが、村は漁業関係施設の新設などに活用。「交付金でようやくできるようになる部分もある。村民のため、漁業のために使う」と村民に還元したい考えだ。
「村には秀でるものはないが、みんなで頑張っている」と話し、顔の見える村民のできる限り多くの人に幸福をもたらす「『最大多数の最大幸福』を実現したい」とほほ笑んだ。
〔横顔〕村出身で、70年に村役場入り。産業課長や住民課長を歴任し、02年から現職。趣味はパークゴルフ。
〔村の自慢〕ウニやアワビ、サケマスなどのおいしい魚介類。村内には行列のできるすし屋があり、遠方からも店を目当てに多くの人が訪れる。
(了)
(2023年10月18日iJAMP配信)