インタビュー 【トップインタビュー】人口増も「ふんぞり返ってはだめ」=高橋広志・福島県西郷村長 2023/10/20 08:30

村の一部が日光国立公園に入るなど自然豊かな福島県西郷村。一方で、高速道路のインターチェンジや新幹線の停車駅を有し、新幹線で東京まで最速約80分という地の利を味方に、人口増加の傾向を維持する。ただ、高橋広志村長(たかはし・ひろし=69)は「いずれ減少に転じるときが来る。ふんぞり返っていてはだめだ」として、子育て支援を中心に移住定住対策の手を緩めない。
村の高齢化率は県内で最も低い26.5%(今年9月現在)。また、生産人口が約60%、0~14歳の割合も約13%で「人口比率のバランスがいい」のが自慢だ。高橋氏は「人口減少が全ての負のスパイラル。投資しなければ人は来ない」と強調する。2022年度、出産や入学時の祝い金支給をスタート。今年度からは約1億円の予算を確保し小中学校の給食費を無償化した。「自治体間の競争だと職員には言っている」。
栃木県との県境に位置する村。新型コロナウイルスの流行でテレワークや休暇先で仕事をしながら余暇を楽しむワーケーションなどへの機運が高まり、「地方へ目が向けられ追い風になった」と語る。「新幹線通勤費補助金」といった遠隔地への通勤手当のほか、住まいに関する制度も手厚くし、移住・定住者を積極的に呼び込む。ただ、大学進学を機に村外に出る若者も多く、18歳~30歳代の人材確保は課題だ。
「一つの自治体でできることは限られる。時には連携も重要だ」として、隣接する白河市を中心とする9市町村で、首都圏からのアクセスの良さを売りに、既設のゴルフやサウナを活用した誘客キャンペーンも実施する。交流人口の増加などを通じて、地域に興味を持ってもらう狙いがある。
「住民と直接話す職員の意見が一番。主体性を持ってもらいたい」との思いから、村政運営では若手、ベテラン問わず積極的にアイデアを募る。11月から配布を始める「子育て応援米」の支給は職員の提案だ。物価高騰に苦労する子育て世帯と、米価下落に悩む米農家の双方を支援し、村産米の消費拡大を推進する。
大手企業や大型太陽光発電の誘致を背景に、財政力指数1.09となり、今年は地方交付税の不交付団体となった。「選ばれる村になるために、自然に恵まれ、都市機能など生活環境が整った村の魅力を発信していきたい」と意気込む。
〔横顔〕日大工学部卒。1980年同村入庁。15年村議に初当選し18年から現職。小学生らにソフトボールを指導していたこともあり、スポーツ中継を見るのが趣味。
〔市の自慢〕JR東北新幹線「新白河駅」は、日本で唯一村に停車する新幹線の駅。首都圏や周辺観光地へのアクセスに恵まれ、四季が楽しめる山間部と生活圏が程よく共存する。
(了)
(2023年10月20日iJAMP配信)