インタビュー 【トップインタビュー】定住促進へソフト策充実=池田東一郎・神奈川県大磯町長 2023/10/25 08:30

万葉集や古今和歌集などでも美しい風景が歌われた神奈川県大磯町。明治時代以降は伊藤博文や島崎藤村など、多くの歴代首相や文化人らが居を構えた。明治150年事業の一環で旧伊藤邸などを「明治記念大磯邸園」として国や県と共に整備中だ。昨年12月に初当選した池田東一郎町長(いけだ・とういちろう=62)は、「町を訪れてもらうためのハードは整備されている。定住してもらうために、子育て支援策などソフト対策(政策)が次の舞台」と気を引き締める。
人口減少対策が喫緊の課題だ。現在の人口は約3万1100人だが、国の調査によると2040年までに約2万5000人に減ると予想されている。このため、23年度を「人口減少対策元年」と銘打ち予算を編成。小学校給食費の完全無償化や、子どもの医療費助成をこれまでの15歳から18歳までに拡充、子どもが遊ぶ公園のリニューアルなど、子育て支援策を充実させた。池田町長は「子育て世代の経済負担を減らす対策は行っているので、次は教育の中身。個人の能力が発揮される場所をつくるために具体策を練っているところ」と話す。
人口減少対策では、高齢者福祉もカギとなる。来年から地域の公民館などで「通いの場」に取り組み、健康づくり体操やゲームを行い、介護予防を進めるという。また、認知症予防や、がん検診の受診率を高めることが重要とし、「病気の早期発見と治療が、医療費の拡大を防ぐ何よりの対策」と力を込めた。
人口については、出生者数と死亡者数の差による「自然増減」ではなく、転入・転出による「社会増減」の影響が大きいと指摘。国全体で人口減少に転じる一方で、同県藤沢市では子育て世帯の転入を背景に、35年までに人口が1万人増えると予測されていることに触れ、「町づくりの良しあしと政策が(人口増減の)要因となる。政策で人口減少に歯止めをかけることはできる」と意気込む。
県が構想する「神奈川版ライドシェア」を高く評価。「タクシー会社を通しドライバーを登録、指導するということで、安全面も考えられており、とても良い試みだと思う」と話す。町でバスの本数が減っていることや、高齢者の免許返納に伴い発生する「交通難民」のためにも「大磯でモデル事業をやってもらいたい」と名乗りを上げた。
〔横顔〕旧労働省や国会議員秘書、県議などを経て22年12月に町長就任。趣味は野球、社交ダンス、買い物。「しばらくやっていないが、ゴルフをそろそろ再開したい」
〔町の自慢〕町の鳥「アオバト」に代表される海や山など豊かな自然と、明治時代のレガシー(遺産)。
(了)
(2023年10月25日iJAMP配信)