2023/令和5年
126日 (

インタビュー 【トップインタビュー】若者流出「歯止めかけたい」=森正一・千葉県館山市長 2023/11/02 08:30

森正一・千葉県館山市長

 「夕日がきれいな街」として知られ、年2回、海越しの富士山に夕日が沈む光景を見ることができる千葉県館山市。森正一市長(もり・しょういち=56)は、若者の流出に歯止めをかけることを第一に掲げる。企業誘致に力を入れるほか、ワーケーションやサテライトオフィスの需要を掘り起こし、移住につなげようと意欲的だ。

 市の2022年の出生数は196人。「初めて200人を下回った。なかなか厳しい」と危機感を募らせる。一方、65歳以上の高齢者の割合は40%を超え、少子高齢化が急速に進んでいる。

 若い世代が少ないのは、進学と就職を機に市を離れることが大きい。地元で働きたい人もいるが、雇用の受け皿が少ないことに加え、「職種のミスマッチも流出の大きな原因の一つ」と指摘する。

 店舗や事業所などの開設を増やすため、都心からのアクセスの良さをアピールするとともに、遊休不動産の有効活用を目指している。また、地域の思い出が詰まった小中学校の廃校舎を民間企業に利活用してもらうことで、街に活気を取り戻したい考えだ。

 ワーケーションやテレワークにも注目している。今年3月、JR東日本が市内で直営するホテルにワークスペースが設けられ、敷地内にサテライトオフィスを誘致するための拠点施設が完成した。市とJR東が国のデジタル田園都市国家構想の交付金を活用して整備したもので、「リモートワークなどの働き方を支援し、テレワーカーの移住促進にもつなげていきたい」と意気込む。

 市ではマリンレジャーやトライアスロンが盛ん。「朝はサーフィンをして、日中はリモートで働き、夕方は夕日を楽しむ。そういう働き方を求める人にこの快適な環境を体験してもらえれば」と話す。「情報発信がまだまだ足りない」として、関西圏などでの市の知名度向上に向け、PRに力を入れていく考えも示す。

 高齢者が多いことから、デジタル化の難しさにも直面する。その一例が防災無線で、膨大な維持費やスマートフォンの普及を踏まえ、設置場所を減らすことを考えるが、スマホを使いこなせない高齢者も多い。ランニングコストを抑えていく必要を指摘しつつも、「高齢者を置いてけぼりにはしない」と気を引き締めている。

 〔横顔〕市議を3期務め、昨年11月の市長選で初当選した。06年に地元少年サッカーチームを設立。「頑張る子どもたちの姿を見て、保護者を含めてみんなで喜ぶ。そんな環境をつくりたかった」と話す。最近は週3回ジョギングする。好きな言葉は「継続は力なり」。

 〔市の自慢〕東京から車で80分。豊かな自然、風光明媚(めいび)な景色。「ダイヤモンド富士は最高。写真愛好家も多く集まる」。年間平均気温が16度以上で「住みやすい」。台湾との交流も活発だ。

(了)

(2023年11月2日iJAMP配信)

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