コラム 【現場力を高める4】メンタルを強くする 2023/11/16 14:00

静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹
▽心の状態を知る
仕事で精神的に追い詰められるのは総じて真面目な人です。何事にも懸命に取り組み、頑張り続けることで、知らず知らずのうちに自分で自分を追い詰めてしまっているのです。
あなたは最近、次のようなことを感じていませんか?
●すぐイライラする
●簡単にできていたことに時間がかかるようになった
●よく眠れない、疲れが取れない
●ささいなことに不安が募る
●趣味や娯楽を楽しめない
●新しいことに挑戦したくない
●人と会うのがおっくうだ
●食欲がない、または食べ過ぎる、飲み過ぎる
いずれもあなたが精神的に追い詰められている証拠です。こうした「症状」に気づいたらやるべきことがあります。仕事をいったん突き放し、職場の舵取りのことをあれこれ考えるのもやめます。まずは1日、忘却と停止の段取りをしましょう。緊急時でない限り、まる一日しっかりと休暇を取りボーッとすごしても、直ちにあなたの業務に支障が出ることはありません。
いったん思考を止め、脳内情報の消去を図ると、自分が精神的にどのような状態になっているかが見えてきます。深呼吸し、おなかに空気を送り込むと、少し落ち着きます。次に、残業を極力やめます。かなり長い間、夜間に仕事を続けていたこと、いつも夕食が遅くなり、入浴して寝るためだけに帰宅していたことなどに気づくはずです。実際は仕事の能率もかなり落ちていたのです。自分の感覚を正常にリセットします。悪しき勤務習慣から脱し、管理職として、またあなた個人として、冷静に仕事の段取りを組み直しましょう。ドロ沼のような超勤地獄からの脱却は、あなたが腹を決めて部下にも伝え、皆ではい出す以外にありません。
▽ちょっとした行動で変わる
気分がさえない、仕事を前向きに捉える気持ちになれない、きょうは役所に行きたくない、行こうとすると身体全体が重い、手足が震える―など、自分ではどうにもならない症状に悩まされることがあります。頭も身体もパンパンに張り詰めていることは確かでしょう。もう一つ重要な要因があります。あなたが気分を変える時間を長期間にわたって確保できていなかった、つまり管理職としてのあなた自身が経営不調になっていたのです。
「気」の落ち込みを打開する方法は、幾つかあります。
〇よく眠る…慢性的な寝不足が身体と脳に及ぼす影響は相当なもの。特に脳が疲れ、まいっています。すべてを忘れ、さっさと寝ましょう。
あれこれ考えて眠れないとき、近年は深い睡眠に導く穏やかな市販薬も出ているので、合いそうなものを選んで試すのもいいでしょう。深くよく眠る。頭を空っぽにするのもまた訓練です。目覚めの良い朝を早く獲得しましょう。
〇よく遊び、食べる…一人でも仲間同士でも、長く遠のいていたリクリエーションを再開することが大切。私は買い物が大好きで、欲しいものがなくても店をよくのぞきます。欲しくて物色している時は、ストレスが音を立てて落ちていくのが分かります。
そして、おいしいものを食べる。気分を変える珠玉の方法です。たまには高級な店で、高級のものを食べましょう。おいしいコーヒーや濃いめのお茶を、ゆっくり楽しむのも効果的。良質なものを身体に入れると、毎日難しいことを考えている自分が、実に単純な動物であることが分かります。
〇忘れるのも訓練…上司から言われたこと、自分の失敗などを、何度も想起して反すうしない訓練をします。すぎたことをあれこれ思い出しては苦しむ非生産性と無価値さを知るべきです。
意図的に忘れることで気分が落ち着き、心の均衡を取り戻すことができます。済んだことは記憶から捨て去り、余計なことは考えない、自ら悩みをつくり出さないのもまた訓練です。自分がこれからどう行動するか、それだけを考えればいい。生きていく術(すべ)として大事な要素だと思います。「考えすぎる脳」の肥大化は、あなたの職場経営においても弊害となります。
▽良い「加減」のススメ
管理職にとって重要だと思われるのは、「ほどの良さ」、良い「加減」です。適宜、適切、丁寧に、そして軽快に職場を運営することです。職場経営者として万事思い詰めないこと、何より部下の前で思い詰めた表情をしないことです。
課長なのだから何でも徹底して管理しなければならない、それが経営だ―などと思わないことです。ほどほどの方が、かえっていいのです。管理職が神経をあまりに研ぎ澄まし、それがゆえにその場の感情で部下に当たってしまうと職場の空気が変わり、部下の心理に大きな影響を与え、長く尾を引くことになります。管理職は無神経ではいけませんが、察しと思いやりの気持ちを持ちながら、物事を軽やかに考え、時に馬鹿を気取る姿勢も大切だと思います。「かるさとあかるさ」です!(了)
- ◇山梨秀樹(やまなし・ひでき)氏のプロフィル
- 1983年静岡県庁に入り、旧総理府(現内閣府)地方分権推進委員会事務局、静岡県総務部合併支援室、藤枝市行財政改革担当理事、同市副市長、静岡県理事(地方分権・大都市制度担当)などを経て、2019年4月から藤枝市理事。同年6月、人財育成センター長に就任。人財育成に関する論文、寄稿などを発表するほか、公務員の「言葉力」をテーマにした研修・講演の講師などを務める。