2023/令和5年
126日 (

インタビュー 【トップインタビュー】ふるさと納税ルール改正、非常に残念=千代松大耕・大阪府泉佐野市長 2023/11/08 08:30

千代松大耕・大阪府泉佐野市長

 ふるさと納税で斬新な施策を展開し、国や他の自治体の注目を集めてきた大阪府泉佐野市。総務省がこの10月に行った基準変更では「痛手」を受けており、千代松大耕市長(ちよまつ・ひろやす=50)は「今回のルール改正は非常に残念」と吐露する。

 総務省は6月、返礼品の「地場産品基準」を見直し、10月1日に適用すると発表。熟成肉と精米が返礼品として認められるためには、原材料を同じ都道府県内で調達することが必要となった。特に熟成肉は市が加工業者を誘致するなど力を入れてきたもの。しかし、府内で原材料を調達するのは容易ではなく、寄付額の「値上げ」や納税額の減少が見込まれる。

 今回の基準変更が泉佐野市を「狙い撃ち」にしたものなのかとの問いに、千代松氏は「うちの熟成肉をできるだけ少なくしたかったという思惑があったのではないか」と苦笑する。返礼品にふさわしい熟成肉の「定義」を総務省が示していないことは問題だとし、基準の不合理性を訴える。

 「地方自治体がアイデアを出して、競争をするべきだみたいに総務省は言っていた」と、当初のふるさと納税の理念の「変質」にも疑義を示す。こうした問題を解決するため、一方的に通知をするのではなく、「協議する場、地方の声を聞いてもらえる場をつくってほしい」と強調。今後は、ふるさと納税のトレンドを押さえつつ、ハンバーグなどの「加工肉」を新たな特産品とすべく、開発に取り組むとしている。

 泉佐野のもう一つの特徴が、関西国際空港の対岸に位置していること。空港職員や宿泊業を中心に「人手不足」が叫ばれる業種のニーズが高く、人材確保が課題だ。市は公式求人サイト「いずみさのマッチボックス」を公開。1日限りでも働きたいという人を募集するなど、働き手の掘り起こしを進める。人材不足は市役所も同様。採用試験では応募資格を「50歳未満」まで広げ、氷河期世代も対象に職員を募っている。

 人口減少が避けられず、行政サービスの維持が長期的な課題となる。泉佐野市は過去に周辺自治体との合併を模索したが、相手側が住民投票で反対多数となり頓挫した経緯がある。「基礎自治体の在り方を考えていく上で、果たしてこのままで大丈夫なのか」。現在の行政運営の在り方の見直しも視野に入れ、広域連携を進める。

 〔横顔〕高校時代はラグビー部。大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、オフェンスライン(OL)としてプレーした。「試合に出る機会という部分」から競技を変更したという。

 〔市の自慢〕海もあり、山もあり、中間部には田園地帯があるところ。関西国際空港への橋を渡れば世界も見ることができる。

(了)

(2023年11月8日iJAMP配信)

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